1 例えば、従業員がフォークリフト作業中の事故で他の従業員を負傷させてしまった場合、会社は使用者責任(民法715条)を問われることになります。
負傷した従業員に後遺障害が残った場合、その従業員にも落ち度があったとしても、裁判例では数百万円の賠償義務が生じています。
労災保険だけではカバーしきれない慰謝料や逸失利益の賠償義務が発生するためです。
多額の賠償義務の発生と同時に事故処理に伴う時間と労力が割かれること、負傷した従業員が働けないことでの生産性の低下等で会社の業績(ひいては従業員の給与)に悪影響を及ぼすことになります。
仮に、倉庫や工場内で物損事故が多発している場合、それがいつ人身事故の発生に、つながるか分かりません。そのため、フォークリフトの運転作業においては、事故が発生しないように会社としても十分な防止策を取ることになります。
2 事故発生時には必ず報告してもらい、隠ぺい、マニュアル違反への処分を行う。
防止策として、法定のフォークリフト運転技能講習(労働安全衛生法61条、76条)を受けることは当然として、日常の業務の中で、事故発生時、特に物損事故の発生時には必ず従業員に報告をさせることです。
その趣旨は事故が発生した時点で情報を共有し、事故原因を追究し、今後の対策に活かすためです。
物損に関しては、会社の備品やフォークリフトが壊れても従業員に弁償を求めないほうがいいでしょう。
誰も、事故を起こそうとして起こしたわけではありません。
裁判例上、従業員が自らの過失で会社の備品を損壊した場合、賠償を求めても裁判所は全額は認めない傾向です。
弁償させることで事故発生を抑止する効果もありますが、逆に弁償をおそれ、事故を隠ぺいするおそれもあります。
会社の方針として、従業員に賠償を求めないとする趣旨を明らかにする一方で、事故が発生したにもかかわらず隠したことが発覚した場合やその後の事故防止策を怠ったことに対しては、処分も検討することになります。
3 最後に
会社の備品は、従業員が働いた結果生じた会社の売上から購入しているものであり、備品の損壊はいわば、従業員の働きを無にする行為にもなるし、同僚に怪我をさせれば刑事事件や民事事件の当事者にもなることなので、自分自身の利害に直結することになることを従業員に説明し、事故防止に務めていくことになります。
以上