今回は、法定利率の改正についてお話します。
この変更が影響する場面としては、「交通事故、労災事故などによる損害賠償の場面」や「利息・遅延損害金について利率を定めずに契約した場合」などがあります。事例としては交通事故が圧倒的に多いと思われるので、以下、主に交通事故を念頭において話を進めます。
法定利率の改正の内容は、以下の3点です。
利率の見直しは、直近5年の短期貸付平均利率を比較し、前回から1%以上の増減があった場合に1%単位で変動、という方法となります。
簡単に言えば、「市場に合わせて緩やかに変動する」ということです。利率はウェブで公表される予定なので、簡単に調べられます。
法定利率の影響が最も大きくあらわれるのは、冒頭で述べたように、交通事故の場面です。交通事故以外でも、事故や事件で不測の損害が生じた場合全般に関わってきます。
交通事故などで死亡したり後遺障害が残ってしまった場合、加害者に「逸失利益」(事故がなければ将来得られたはずの収入)を請求することができます。
しかし、一括で賠償する場合、「将来得るはずの収入」をまとめて得ることになるので、早く手に入れた分の利息相当額を差し引かれることになります。これを中間利息控除といい、この控除額は、法定利率によって計算されます。
法定利率が5%から3%になれば、その分控除額が減り、逸失利益として受け取れる額が増えることになります。
逆に、事故から実際の賠償が終わるまでに時間がかかった場合、その期間に対して遅延損害金が生じます。示談の場合はこれを省くことが多いのですが、訴訟の場合には法定利率にしたがって計算した遅延損害金を請求することになります。
法定利率が5%から3%になると、その分遅延損害金として受け取れる額は減ることになります。
たとえば、年収500万円の独身男性(37歳)が無過失の交通事故で死亡し、事故から2年後に支払いを受けた場合、現行法と改正法では、以下の表のように約867万円の差が生じます(実際よりも計算を単純化しています)。
慰謝料 | 逸失利益 | 遅延損害金 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
5% (現行法下) |
約2500万円 | 約3843万円 | 約634万円 | 約6977万円 |
3% (改正直後) |
約2500万円 | 約4900万円 | 約444万円 | 約7844万円 |
法定利率は、「利息が生じた最初の時点」の利率を適用し、その利率で固定されます。交通事故の場合で言えば、逸失利益も遅延損害金も、事故日の法定利率で計算されることになります。
したがって、2020年3月31日までの事故は現行法、同年4月1日以降の事故は改正法の法定利率が適用となります。
法定利率は、通常の生活ではあまり意識しないかもしれませんが、以上のように、金額的に大きな差を生じることがあります。交通事故や労災事故は誰にでも起きうることなので、注意が必要かもしれません。
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