みなさまこんにちは 代表の萩原です。
労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務(テレワーク)に関しては,時間や場所を有効に活用できるといったメリットがある反面,労働時間の管理が難しく,自宅で勤務をした場合の費用負担の問題等をきちんと整理しておかないと後日の労務トラブルになりかねません。
以下,労働時間の管理面と費用負担の面に分けてご説明します。
労働時間の管理は,使用者側に求められているために,この点を曖昧にすると,労働者から,パソコンの使用時間の記録やメールの送受信の記録を基に,その前後の時間をすべて労働時間として主張される可能性があります。
テレワークの場合,勤務時間中に,私用(例 銀行や市役所での手続き,子供の幼稚園の送迎)に充てたいというニーズが出た場合の対応も必要でしょう。
いわゆる中抜け時間の問題です。
対応としては,時間ごとの有給休暇の取得を可能にするか,フレックスタイム制を取ることが考えられます。
フレックスタイム制は始業と終業の時刻を労働者の決定に委ねる制度ですが,きちんと就業規則等で定めをおいて運用してください。
労働時間の把握や中抜け時間への対応の手間を省きたいという企業の中には,事業場外みなし労働時間制(労基法38条の2)の導入を検討するところもあります。
しかし,この制度は,使用者の具体的な指揮監督が及ばず,労働時間を算定することが困難であるという場合に適用されるので,ネットで繋がっていても労働者が,自由にパソコンから離れることやパソコンの電源を切ることも認められている状況だったり,会社からスマホを支給されていても,会社からの指示に即応する義務が課されていない状況であることが必要です。また仕事の進め方も労働者に任せられていなければなりません。
また事業場外みなし労働時間制を採用しても,休日労働や深夜労働をした場合には,所定の割増賃金を支払わなければならないことには注意が必要です(「何時に仕事しても休んでもいいので,●月●日までにこの仕事をやってください,仕事のやり方は君に任せます。」という指示をし,労働者が土日,深夜にまとめて仕事をしたら,後日,割増賃金を請求されかねないということです。)。
自宅での勤務をする際に使用するパソコンやスマホは会社から支給することにしてください。従業員の個人のパソコン,スマホを利用することはお勧めしません。
万が一,従業員とのトラブルが生じた場合,パソコン上のデータを消去されたり,持ち出されても,パソコンが戻ってくればデータ復旧を専門業者に依頼することができますし,復旧の過程でネットの閲覧記録といった情報も取得できるからです。
また,自宅に通じているネット回線を使用して業務を行ってもらう場合,事前にネットの回線料といった点も費用負担について決めておかないと後日,労働者から,ネット回線の使用料のすべてを請求される可能性もあります。
企業は,労働者に対して何を期待しているのか,それは勤務時間中に仕事の成果をきちんと出してもらうことであり,仕事の成果をきちんと出すために,企業としてどのような環境整備を行えばいいかという観点からテレワークの制度をつくることになります(この観点はテレワークに限りません。)。
既存のどの枠組みを使っても深夜労働や休日労働を行えば割増賃金は発生しますし,労働者が健康を損なう可能性も高まります。
時間の管理に頭を悩ませ,労働者を監視するような形にすると,メンタルヘルスやハラスメントの問題も生じて,逆に生産性を低下させることにもなりかねません。
いかに一定の時間内に,成果を出すかという業務改善や仕事の管理(重要度をランク付けしてメリハリをつけたりする)に力を割くことで生産性を高めることにつながります。
以上