相続法については,平成30年7月に約40年ぶりに大きく改正され,平成31年1月から段階的に施行されています。
今回から,全6回に分けて相続法改正の押さえるべきポイントをご紹介いたします。
第1回は,「配偶者居住権」の新設について紹介したいと思います。
配偶者居住権は,故人が所有していた自宅に以前から住んでいた配偶者が,その住居に原則として終身居住する権利を認める制度です。
自宅の建物に関する権利を「居住権」と「所有権」に分けたうえで,配偶者に居住権を認めています。
ただし,ただ単に,配偶者が故人の住居に住んでいただけでは,配偶者居住権は適用されません。
故人が生前に残した遺言であったり,他の共同相続人との遺産分割協議や,家庭裁判所の審判が必要になります。
では,配偶者居住権を利用すると,どのようなメリットがあるのでしょうか。
例えば,以下のようなケースで考えてみましょう。
亡くなった夫の遺産総額5000万円(内訳:自宅3000万円,預貯金2000万円)を,妻と子1人で2分の1ずつ分ける。
このケースの場合,妻が3000万円の自宅を相続すると,遺産総額の2分の1である2500万円を超えるため,遺産をもらいすぎることになります。
そうすると,妻自身の財産から500万円を持ち出すか,または,自宅を処分して子に500万円を支払うことになりかねません。
この場合,妻は,配偶者居住権を相続して自宅に居住を続けて,自宅の所有権は子に譲ることで,そのような不都合を避けることができることがあります。
先ほど,「自宅の建物に関する権利を「居住権」と「所有権」に分ける」と説明したのはこのような意味です。
先ほどのケースの場合,例えば,配偶者居住権そのものの価値が1000万円であれば,妻は,配偶者居住権1000万円に加えて預貯金1500万円を相続することができます。妻は,住居に住む権利と生活資金の両方が手に入ることになります。
他方で,子は,自宅の所有権と預貯金500万円を相続することができます。
このように,相続人同士で遺産を公平に分けながら,残された配偶者の生活の安定を守ることができます。
配偶者居住権の施行は,令和2年(2020年)4月1日です。
令和2年(2020年)4月1日より前に亡くなった場合については適用の対象外となります。
配偶者居住権は,実際に利用するにあたり,「配偶者居住権の財産価値はどう計算するのか?」「配偶者居住権を取得した場合に何か手続が必要か?」など,様々な検討も必要になります。
ケースによっては,配偶者居住権の価値が,不動産の所有権の価値と同じになってしまうこともあります。その場合は,配偶者居住権を利用する意味がほとんどないでしょう。制度を利用するメリットがあるかどうかは,やはり,皆様の事情を個別に検討することが必要になってきます。
まずは新しい制度ができることを知っていただき,具体的な相続対策については専門家にご相談するとよいでしょう。皆様それぞれの事情を考えてオーダーメイドでアドバイスいたしますので,私たち弁護士に気軽にご相談いただければ幸いです。
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