中小企業庁では,М&A支援機関の登録制度を設けています。
支援機関として登録すると,中小企業М&Aガイドラインを遵守することを宣言することを対外的に示すことになります。
遵守を宣言した内容のうち,以下の点は,重要な点なので,説明を行い依頼者の納得を得ることになっています。
(1)譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と契約を締結し双方に助言する仲介者と,一方当事者のみと契約を締結し一方のみに助言するFAとの違い,及びそれぞれの特徴
(2)提供する業務の範囲・内容(マッチングまで行うか否か,バリュエーション,交渉,スキーム 立案等)
(3)手数料に関する事項(算定基準,金額,支払時期等)
(4)秘密保持に関する事項(秘密保持の対象となる事実,士業等専門家等に対する秘密保持 義務の一部解除等)
(5)専任条項(セカンド・オピニオンの可否等)
(6)テール条項(テール期間,対象となるМ&A等)
(7)契約期間
(8)依頼者が,仲介契約・FA契約を中途解約できることを明記する場合には,当該中途解約に関する事項
今後,М&Aを利用し,事業拡大や承継,開業を考えている企業,個人は支援機関として登録しているかどうかを専門業者を選別する目安にできますし,重要な点に注意して専門業者との間で契約を結ぶことができます。
ところで,М&Aは,基本的に株式を売買することで成り立ちますが,企業を構成する人,モノ,カネ,そして対外的な権利義務関係も含め丸ごと企業を譲り受けることになります。
個人と企業との取引は,動産の売買であれば個人消費者は消費者契約法等で保護されます。不動産の売買であれば仲介業者に対しては宅建業法により専門業者に特別の義務を課すことで,個人の売主,買主は保護されています。そういった特別法や業法による保護が,М&Aの世界ではまだ未整備です。
そのため,今後,個人によるМ&Aが活発化するにつれて,企業を買ってはみたもののこんなはずではなかった,株式を売却したけど,代金は払われない,後日,買主側からクレームが来たというトラブルに巻き込まれることが予想されます。
1億円以下の取引は小規模であるとされる世界です。また,国の補助金を申請するためには登録支援機関の登録が要件となっています。専門業者の選別に登録支援機関の登録の有無という一つの目安があることは意識しておくといいと思います。
以上