平成29年8月8日に筑西本部において,野田弁護士・萩原弁護士が,残業代請求訴訟の実務について,社会保険労務士の先生方と勉強会を行いました。
以下,セミナー中回答が終わらなかったご質問に関して,回答を掲載いたしました。
今回は,残業代請求訴訟に関して,二つの判例を取り上げて労働者側からの注意点,使用者側からの注意点等を講義しました。
積極的にご質問,ご指摘いただき,当事務所でも大いに学ばせて頂く機会となりました。
質問・回答が講義時間内に終了しなかったものについて,以下に掲載させていただきます。
質問 付加金の負担を減らす方法は無いか。
回答 興味深い最高裁判例がありますので,ご紹介します。
一審で残業代支払い及び付加金の支払いを命じられた会社が,控訴を申立て,控訴審の期間中に残業代全額を労働者に払った場合,裁判所は会社に対してさらに付加金の支払いを命ずることができないと判断した判例があります(平成26年3月6日判タ1400号97頁)。
理由を要約すると,付加金の支払い義務は,使用者が未払い割増賃金等を支払わない場合に当然発生するものではなく,労働者の請求により裁判所が付加金の支払いを命じることによってはじめて発生するものである。従って,使用者が割増賃金を支払っていなくても,裁判所が支払いを命じるまでの間に,使用者が支払いを完了し,義務違反の状況が消滅した場合は,もはや裁判所は付加金の支払いを命じられなくなる,ということです。(参照:労基法114条)
以上より,一審で付加金の支払いを命じられた場合,控訴審で争い,敗訴の見込みが立った時点で残業代を支払えば,付加金の負担を減らすことも可能と考えられます。